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目次

  • はじめに
  • 金融庁による仮想通貨交換業者に対する立入検査及び行政処分
  • 金融庁の設置した仮想通貨交換業等に関する研究会
  • 日本仮想通貨交換業協会の設立と資金決済事業者協会としての認定への動き
  • まとめ

はじめに

本年1月のコインチェックにおけるNEMの不正流出事件を転機に、仮想通貨交換業に対する法規制や行政による監督の在り方が大きく変化している。現在、仮想通貨交換業登録に対する金融庁の審査基準の見直し、「仮想通貨交換業等に関する研究会」での議論の行方、さらに、一般社団法人日本仮想通貨交換業協会の自主規制規則の策定に注目が集まっているが、本連載を始めるにあたって、まずは、NEM不正流出事件以降の半年間の規制動向を振り返ることとしたい。

金融庁による仮想通貨交換業者に対する立入検査及び行政処分

本年1月26日、みなし仮想通貨交換業者であるコインチェックが顧客から預託を受けていた仮想通貨NEMが、不正に外部へ送信され、5億2300万NEM(当時の時価で約580億円相当)が流出する事件が発生した。この事件を受けて、金融庁は、2月1日、同社以外の仮想通貨交換業者及びみなし仮想通貨交換業者に対し、システムリスク管理態勢に関する報告徴求命令を発出し、同月2日からコインチェックへの立入検査を開始した。

その後、金融庁は、順次、全てのみなし仮想通貨交換業者、複数の登録仮想通貨交換業者に対する立入検査を実施し、4月25日までに、みなし仮想通貨交換業者10社及び登録仮想通貨交換業者2社に対して、業務改善命令又は業務停止命令を発出した。

そして、6月7日には、みなし仮想通貨交換業者1社に対して、仮想通貨交換業としては初めてのケースとなる登録拒否処分が行われた。

さらに、6月22日には、登録仮想通貨交換業者のうち、昨年9月に登録を受けた大手6社に対して、業務改善命令が出された。

なお、登録仮想通貨交換業者の全てに対して立入検査が実施されたものではないと思われるため、現時点で行政処分を受けていない登録業者の場合であっても、今後、立入検査が実施され、行政処分を受ける可能性がある。

6月22日に発出された大手6社に対する業務改善命令の主な内容としては、以下が挙げられる。

  • 経営管理態勢の構築
  • マネー・ローンダリング及びテロ資金供与に係るリスク管理態勢の構築
  • 反社会的勢力等の排除に係る管理態勢の構築
  • 利用者財産の分別管理態勢及び帳簿書類の管理態勢の構築
  • 利用者保護措置に係る管理態勢の構築
  • システムリスク管理態勢の構築
  • 利用者情報の安全管理を図るための管理態勢の構築
  • 利用者からの苦情・相談に適切に対応するための管理態勢の構築
  • 仮想通貨の新規取扱等に係るリスク管理態勢の構築

各社は業務改善計画を平成30年7月23日までに書面で提出し、業務改善計画の実施完了までの間、1ヶ月毎の進捗・実施状況を、翌月10日までに書面で報告することが求められている。

金融庁の立入検査とそれに続く行政処分によって明らかになったのは、昨年における想定を大きく越えた仮想通貨ビジネスの業容・業量の拡大に対して、各業者の経営管理態勢や法令遵守態勢の整備が追いつかなかったという事実であるといえよう。これまで、仮想通貨交換業者は、新規顧客の獲得や業容拡大において激しい競争を行ってきたが、今後は、金融機関に相応しい経営管理態勢、法令遵守態勢を如何に早急に整えることができるかが、差別化の重要なポイントとなろう。

金融庁の設置した仮想通貨交換業等に関する研究会

金融庁は、仮想通貨交換業等をめぐる諸問題について制度的な対応を検討するため、本年3月、「仮想通貨交換業等に関する研究会」を設置した。本研究会の会議では、学識経験者、金融実務家等をメンバー、仮想通貨交換業者等の業界団体、関係省庁をオブザーバーとし、金融庁が事務局を務めている。2018年6月末までに行われた4回の会議では、仮想通貨交換業及びICO等の現況報告、金融庁の仮想通貨交換業へのこれまでの対応、各国の仮想通貨に対する規制動向、仮想通貨とブロックチェーンの関係や技術動向などが話し合われたが、法規制に関する特定の方向性は現時点では示されておらず、今後の議論が注目される。

日本仮想通貨交換業協会の設立と資金決済事業者協会としての認定への動き

本年3月29日、登録仮想通貨交換業者全16社を正会員とする一般社団法人日本仮想通貨交換業協会(「JVCEA」)が設立された。JVCEAは、資金決済法に基づく認定資金決済事業者協会として金融庁の認定を受けることを目指して目下、自主規制規則等の検討を進めていると伝えられている。

JVCEAが金融庁によって認可されると、証券業界における日本証券業協会やFX業界における金融先物取引業協会と類似した自主規制団体として、仮想通貨交換業に関する会員企業に対する指導、監督などの業務を行うこととなる。主な業務としては、①自主規制規則の制定、②会員への指導・勧告等、③契約内容の適正化など利用者保護を図るために必要な指導・勧告等、④仮想通貨交換業務の適正化や情報管理を図るために必要な規則の制定、⑤会員に関する情報の利用者への周知等、⑥利用者からの苦情に関する対応などが挙げられる。

JVCEAが金融庁の認可を取得した場合には、同協会は強制加入団体ではないものの、仮想通貨交換業を営もうとする業者にとっては、必要な態勢整備のために同協会に加入することが事実上のスタンダードとなる可能性が高いと思われる。

まとめ

以上のとおり、この半年の間で、仮想通貨交換業に対する規制の環境は激変した。この環境変化に如何に対応できるかが、各業者はもちろん、日本における仮想通貨ビジネスの将来に大きく影響することとなろう。

(注)本稿における意見や解釈に関する記述は、著者の個人的な見解によるものであり、所属する法律事務所の見解を示すものではない。

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この記事を書いた人:河合健

河合健

アンダーソン・毛利・友常事務所パートナー。フィンテック分野の法務に精通し、仮想通貨取引所等の仮想通貨関連企業及び大手金融機関等に対して、仮想通貨(仮想通貨交換業登録、仮想通貨ファンド、ICO等)及びブロックチェーンに関するリーガルアドバイスを多数行う。 事業者団体である日本仮想通貨事業者協会の顧問弁護士。 また、大手金融機関においてデリバティブ取引等の市場業務に約15年間従事した経験を踏まえ、金融規制法、デリバティブ取引、仕組商品、金融商品関連紛争等に関し、金融実務に即したアドバイスを行うことを得意とする。

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