仮想通貨の相場は大きく変動する場合がございます。また、レバレッジ取引を行う場合は投資額を上回る損失が生じる可能性がございます。

目次

  • 1、はじめに
  • 2、自主規制団体の認定及び自主規制規則
  • 3、金融庁の仮想通貨交換業の登録審査
  • 4、今後の方向性

1、はじめに

10月24日、金融庁は、一般社団法人日本仮想通貨交換業協会(JVCEA)を、資金決済法87条に基づき、認定資金決済事業者協会(いわゆる認定自主規制団体)として認定した。同日、JVCEAは、同協会の定款及び自主規制規則一式をホームページ(https://jvcea.or.jp/)で公開している。これと並行して、同日、金融庁は、仮想通貨交換業者の登録審査に関するプロセスについて詳細な公表を行った(https://www.fsa.go.jp/news/30/virtual_currency/20181024-2.html)。

そこで、本稿では、JVCEAの自主規制規則と金融庁の仮想通貨交換業者の登録審査のプロセスについて概観し、今後の仮想通貨交換業者の監督及び登録審査の方向性を検討したい。

2、自主規制団体の認定及び自主規制規則

仮想通貨交換業者は、会員企業に対する指導、監督などの業務を行うことを目的とする事業者団体を任意に設立することができ、この事業者団体のうち、一定の要件を充足する団体が認定資金決済事業者協会として認定される(資金決済法87条以下)。JVCEAは、この認定資金決済事業者協会である。同協会には、現在、登録済み仮想通貨交換業者全16社が第一種会員として参加しており、仮想通貨交換業者登録の申請中又は申請予定の事業者は第二種会員としての入会を申し込むことができる。第三種会員として、周辺ビジネスを行う事業者など協会の目的に賛同する者を対象とする予定とされているが、詳細は未定である。JVCEAは任意加入団体であり、仮想通貨交換業登録を取得又は維持するために必ず入らなければならないものではないが、後述のとおり、金融庁が公表した「仮想通貨交換業者の登録審査に係る質問票」の内容に、JVCEAの自主規制規則を踏まえた質問が少なからず含まれていること等に鑑みると、同協会に属さずに、仮想通貨交換業登録を目指すことは相当にハードルが高いものと思われる。

JVCEAの主な業務は、①自主規制規則の制定、②会員に対する検査、③会員に対する指導、勧告及び処分、④業務相談、⑤苦情受付、⑥情報提供、⑦統計調査とされている。特徴的なのは、仮想通貨交換業についての自主規制を業務の対象とするのみならず、法令に定めのない仮想通貨ビジネス(例えば仮想通貨に関連する差金決済・デリバティブ取引、仮想通貨のウォレットサービス等)に関する自主規制も業務の対象としている点である。

自主規制規則(https://jvcea.or.jp/about/rule/)の詳細は紙幅の関係から割愛するが、仮想通貨交換業者への金融庁検査の結果において指摘された事項(仮想通貨交換業者等の検査・モニタリング 中間まとめ:https://www.fsa.go.jp/news/30/virtual_currency/20180810.html)等を踏まえて、特に①経営管理・内部統制、②システムリスク・サイバーセキュリティ、③AML/CFT、④新規仮想通貨の取扱、⑤広告・勧誘について、踏み込んだ規則が制定されているといえよう。

また、JVCEAが金融庁の仮想通貨交換業等に関する研究会に提出した資料(https://www.fsa.go.jp/news/30/singi/20180912-4.pdf)によれば、自主規制規則の策定に当たっては、金商法及び金商業に関する自主規制規則などを参考にしたとのことである。JVCEAにおいても、現状においては、仮想通貨は決済手段というよりもむしろ金融商品的な性質が強いと判断していると推測され、金融庁が上記中間まとめにおいて、仮想通貨を「暗号資産」と読み替えたことと軌を一にしている。実際、「証拠金取引に関する規則」、「不適正取引の防止のための取引審査体制の整備に関する規則」及び「財務管理に関する規則」などにおいて、金商法、日本証券業協会の自主規制規則、金融先物取引業協会の自主規制を参考にしたと思われる記述が多く見られる。

読者の関心が高いと思われる「証拠金取引に関する規則」及び同ガイドラインにおいては、現在、法令上明確な規制がない差金決済型の仮想通貨証拠金取引についてのルールを定めており、当面の間、レバレッジ倍率を4倍(但し、利用者のロスカットにおいて生じうる業者の未収金の発生を防止することができる倍率とすることも可能)とすることとなった。また、一部の業者において証拠金取引における価格と現物取引価格が大きく乖離することがある現状を踏まえて、証拠金取引価格のベンチマーク価格との乖離防止措置をとるべき旨が規定されている。さらに、証拠金取引では業者が自己取引によって価格を歪めたりしないように、業者は各月の自己勘定取引の結果を公表すべきことが規定されている。

また、本年1月のコインチェック及び9月のZaifのハッキングにおいては、幸い業者の倒産のような事態は発生しなかったものの、ハッキングその他の事情によって、業者が破綻するリスクが現実的なものとして意識されるようになっている。このような状況を踏まえて、「財務管理に関する規則」においては、業者に健全な財務状態の維持と、市場リスク、取引先リスク、オペレーショナルリスク、流動性リスクの適切な管理を義務付けている。特筆すべきは、ホットウォレットで仮想通貨を管理する場合、サイバー攻撃による秘密鍵の喪失リスクを慎重に評価したうえで、喪失リスクに見合った額の弁済が円滑にできる弁済能力の維持を義務付けていることである。具体的には、①利用者への仮想通貨返還義務の履行に必要な額に相当する自己保有の仮想通貨をコールドウォレットにて保管するか、あるいは、②当該義務の履行に必要な額に相当する安全資産(銀行預金、国債、地方債又はこれに準ずるもの)を保有することがあげられている。但し、保険等でリスクが軽減できている場合にはその分を差し引くことが可能とされており、また、技術的にサイバー攻撃の防止措置、サイバー攻撃があった場合の被害低減措置、被害拡大防止措置を講じている場合には、リスク評価において勘案できることとされている。

新規仮想通貨の取り扱いについては、会員たる業者においてまず内部審査を行ったうえで、JVCEAへの事前届出が必要となる。JVCEAでは、異議を述べることができるため、この届出は単なる届出でなく実質的な審査と考えられる。なお、仮想通貨の取扱いに関する規則では、当該仮想通貨及び発行体に関する多面的かつ詳細な情報の取得と審査が必要となるため、新規仮想通貨のいわゆる上場は引き続き限定的となり、日本の業者における取扱数が大きく増える可能性は小さいと思われる。なお、ICOに関する規則は現在検討中であり、年内をめどに公表されるものと思われる。

3、金融庁の仮想通貨交換業の登録審査

金融庁は、10月24日、仮想通貨交換業登録に関し、①「仮想通貨交換業者の登録審査プロセス」、②「仮想通貨交換業者の登録審査に係る質問票」、及び③「仮想通貨交換業者の登録審査における主な論点等」公表した。③の論点等で示された問題意識をもとに、②の質問票が作成されており、実際の登録審査に当たっては、登録を目指す業者は、この質問票に対する適切かつ十分な回答をすることと、実際にその回答に応じた業務を行うことができる態勢を整えていることが必要となる。

論点等(https://www.fsa.go.jp/news/30/virtual_currency/20181024-3.pdf)であげられた各項目は以下のとおり。①ビジネスモデル、②仮想通貨の取扱いリスク、③経営管理等、④内部監査、⑤利用者保護措置、⑥利用者財産の分別管理、⑦利用者情報管理、⑧外部委託、⑨システムリスク管理、⑩マネー・ロンダリング及びテロ資金供与対策。また、審査が長期化することになる要因についても記載がなされている。

実際に新規参入業者が対応する質問票は約450項目の質問で構成されており、特にAML/CFTとシステムリスク管理に重点が置かれている。これらの質問は業務の詳細にわたっておりであり、各質問に対する回答は、予定している業務に沿って具体的に記載する必要があり、回答を裏付ける資料の添付も必要である。業務を実際に行っていない段階で、この質問に答えていくのは容易ではなく、仮想通貨交換業に実際に従事していた人材、金融商品取引業、銀行業において関連業務(特にAML/CFT)を担当していた人材、サイバーセキュリティの専門家などがチームに専属していないと態勢整備が難しいものと思われる。資金決済法における仮想通貨交換業登録の規定振りからすれば、当初は資金移動業登録と同程度の登録審査が予定されていたと思われるが、現時点では、第一種金融商品取引業登録の審査と同程度あるいはそれよりも厳しい審査となっていると思われる。

また、特徴として、仮想通貨交換業として規制されていない事項(証拠金取引等)や資金決済法上、仮想通貨交換業者に必ずしも義務付けられていない事項(不公正取引に関する事項)なども審査対象となっていることである。これらの事項は、JVCEAの自主規制規則において第一種会員である仮想通貨交業者が遵守すべき事項と軌を一にしているが、これらの事項を遵守できない場合には、金融庁の登録審査をパスすることはできないと思われる。

4、今後の方向性

上記のとおり、JVCEAの自主規制規則と金融庁の現在の仮想通貨交換業登録審査の考え方を踏まえれば、今後、仮想通貨交換業登録を取得できる企業は、高度なテクノロジーと金融機関としてのコンプライアンスの両面を兼ね備えた企業に限定されていく可能性が高く、IT系のスタートアップが単独で業登録を取ることは相当に難しくなるものと予想される。また、今後、仮想通貨ビジネスに対する新たな金融規制(例えば、仮想通貨デリバティブ取引を規制するための金商法改正)が導入される可能性も高いと見るべきであろう。このような方向性についての評価は、それぞれの立場によって様々であろうが、日本は、仮想通貨分野においても他の多くの産業と同じように、全体としては、新しいビジネスモデルやテクノロジーの発信地となることはなく、より成熟した企業を中心にビジネスが展開される市場になるように思われる。

 

(注)本稿における意見や解釈に関する記述は、著者の個人的な見解によるものであり、所属する法律事務所の見解を示すものではない。

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この記事を書いた人:河合健

河合健

アンダーソン・毛利・友常事務所パートナー。フィンテック分野の法務に精通し、仮想通貨取引所等の仮想通貨関連企業及び大手金融機関等に対して、仮想通貨(仮想通貨交換業登録、仮想通貨ファンド、ICO等)及びブロックチェーンに関するリーガルアドバイスを多数行う。 事業者団体である日本仮想通貨事業者協会の顧問弁護士。 また、大手金融機関においてデリバティブ取引等の市場業務に約15年間従事した経験を踏まえ、金融規制法、デリバティブ取引、仕組商品、金融商品関連紛争等に関し、金融実務に即したアドバイスを行うことを得意とする。

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