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11月16日、米国証券取引委員会(「SEC」)のDivision of Corporation Finance、 Division of Investment Management、 及びDivision of Trading and Marketsの3部門は共同で、Statement on Digital Asset Securities Issuance and Tradingと題するパブリック・ステートメント(「本ステートメント」)を発表した。

目次

  • 1、はじめに
  • 2、デジタルアセット証券の募集及び販売
  • 3、デジタルアセット証券に投資する投資ビークル
  • 4、流通市場におけるデジタルアセット証券の取引
  • 5、まとめ

1、はじめに

11月16日、米国証券取引委員会(「SEC」)のDivision of Corporation Finance、 Division of Investment Management、 及びDivision of Trading and Marketsの3部門は共同で、Statement on Digital Asset Securities Issuance and Tradingと題するパブリック・ステートメント(「本ステートメント」)を発表した。

https://www.sec.gov/news/public-statement/digital-asset-securites-issuuance-and-trading

本ステートメントは、①ICOを含むデジタルアセット証券(注:証券に該当するデジタルアセットの意味と考えられる。)の募集及び販売、②デジタルアセット証券への投資を行う投資ビークル及び当該証券への投資勧誘を行う主体、③デジタルアセット証券の流通市場における取引について、近時のSECの法執行事例を引きながら、連邦証券法に基づく規制を遵守することの重要性を強調している。また、SECは、投資家と資本市場に寄与するテクノロジーのイノベーションは歓迎するものの、市場参加者は、確立され、かつ、適切に機能している連邦証券法の枠組みを遵守しなければならない旨を強調している。

本ステートメントの内容は、デジタルアセット証券についてこれまでSECが発出した命令等に基づいており、必ずしも新しい判断を示すものではないが、SECのこの分野に対する考え方が端的にまとめられているので、その概要を以下で説明したい。

2、デジタルアセット証券の募集及び販売

SECはデジタルアセット証券の募集及び販売について数々の法的措置を講じてきているが、その際に、基本的に以下の2つの論点が重要であるとしている。

  • 連邦証券法の目的に照らし、どのような場合にデジタルアセットが証券にあたるか
  • デジタルアセットが証券に該当する場合に、どのようなSECの登録義務が課されるか

まず、①については、注釈の中で、2017年7月25日付けのDAOレポート及び2017年12月11日付けのMuncheeに対する命令を例に挙げつつ、投資契約として募集・販売されたデジタルアセットは証券に当たることを強調している。

次に、②に関しては、本ステートメントと同日に発出したAirFox及びParagonに対する命令を例にとって説明をしている。AirFox及びParagonはいずれも、ICOを行った際に証券の募集に関する登録義務を怠ったことが問題とされた。両社は、それぞれ25万ドルの罰金を課せられたほか、①1934年証券取引法に基づきトークンを証券として登録すること、②SECに定期的に報告書を提出すること(継続開示)、及び③投資家から請求があれば返金に応じることに同意した。①により、投資家は、両社が証券取引法を遵守していればICO時のトークンの募集・販売に先立って得られたであろう情報を得ることになり、②により、投資家は、両社に対して、返金を求めるか、それとも、トークンの保有を継続するかを選択できることとなる。つまり、証券に該当するデジタルアセットを募集・販売する場合には、証券取引法に基づく登録を行い、募集・販売後も継続開示をしなければならないことが改めて確認されている。

なお、SECは、発行体が、すでに違法な募集・販売を行っていたとしても、上記のような方法をとれば、今から連邦証券法を遵守することができるとしている。

3、デジタルアセット証券に投資する投資ビークル

SECは、Crypto Asset Managementに対する命令を例に挙げて、デジタルアセット証券を保有する投資ビークル(ファンド)及びデジタルアセット証券への投資を他者に対して助言する主体は、投資会社法及び投資助言法に基づく登録並びに規制上及び受託者としての義務を負うことに十分注意しなければならないとしている。

4、流通市場におけるデジタルアセット証券の取引

SECは流通市場におけるデジタルアセット証券の取引について、証券取引所としての登録を必要とする場合とブローカー又はディーラーとしての登録を必要とする場合に分けて説明している。

(1)証券取引所としての登録

デジタルアセット証券の取引を提供し、連邦証券法に定義される「取引所」として運営されているプラットフォームは、そこで用いられているテクノロジーがどのようなものであったとしても、適用除外に当たる場合を除き、SECに登録しなければならない。SECは、先般のEtherDeltaの創業者への執行命令においてこの点が明確に示されていると述べている。EtherDeltaへの命令においては、EtherDeltaは、オーダーブック、オーダーを表示するウェブサイト、イサリアムブロックチェーン上のスマートコントラクトを結びつけて用いることによりデジタルアセット証券の買い手と売り手を結びつけるマーケットプレイスを提供しているとした上で、EtherDeltaのスマートコントラクトは、オーダーメッセージを承認し、オーダーの契約条件を確認し、突き合ったオーダーを執行して、取引を反映すべく分散台帳を更新するようにコーディングされていたと事実認定している。その上で、SECは、EtherDeltaの活動は、明らかに「取引所」の定義に該当し、EtherDeltaの創業者は、EtherDeltaを米国証券取引所として登録すべき義務を怠ったとしている。

そして、SECは、買い手と売り手を結びつけるマーケットプレイスが「取引所」に該当するか否かは、運営者がどのように自らを性格づけているかにかかわらず、関連する事実と状況を勘案して機能面から評価するとしている。なお、取引所登録の適用除外としてはAlternative Trading System (ATS)規則に則ってATSとしてマーケットプレイスを運用することが上げられている。

 (2)ブローカー又はディーラーとしての登録

取引所に該当しなくとも、ICOにおけるデジタルアセット証券の発行又は流通市場におけるデジタルアセット証券の取引を促進している主体は、ブローカー又はディーラーとしてSECに登録し、かつ、FINRA(Financial Industry Regulatory Authority)等の自主規制機関の会員にならなければならない可能性がある。ここで、ブローカーとは、概要、他者勘定のために証券の取引を行うビジネスに従事する者をいい、ディーラーとは、概要、自己勘定で証券の売買を行うビジネスに従事する者をいう。SECは、ここでも、デジタルアセット証券の取引を促進する主体が、ブローカー又はディーラーに該当するか否かについては、当該主体が自らをどのように性格づけているかにかかわらず、関連する事実と状況に基づく機能的アプローチにより判断される旨を述べている。その上で、SECはTokenLotに対する命令において、TokenLotがブローカー及びディーラーとして行動していたと判断した根拠について述べている。

5、まとめ

上記のとおり、本ステートメントは、トークンがデジタルアセット証券に該当する場合には、トークンの募集・販売、トークン投資ファンド及びトークンの流通市場での取引に関し、原則として、SECの登録等が必要とされる旨を改めて公表するものである。

注意すべき点は、連邦証券法においては、広範なデジタルアセット又はトークンが証券に該当しうるところ、行為主体が米国内に存在しなくても、適切なKYC等を通じて、米国居住者や米国人へのサービス提供を行わないようにしないと、原則として、連邦証券法の適用がありうることである。特に、KYCを適切に行っていない仮想通貨取引所や分散型取引所(DEX)については、そのリスクが高いように思われる。

 

(注)本稿における意見や解釈に関する記述は、著者の個人的な見解によるものであり、所属する法律事務所の見解を示すものではない。

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この記事を書いた人:河合健

河合健

アンダーソン・毛利・友常事務所パートナー。フィンテック分野の法務に精通し、仮想通貨取引所等の仮想通貨関連企業及び大手金融機関等に対して、仮想通貨(仮想通貨交換業登録、仮想通貨ファンド、ICO等)及びブロックチェーンに関するリーガルアドバイスを多数行う。 事業者団体である日本仮想通貨事業者協会の顧問弁護士。 また、大手金融機関においてデリバティブ取引等の市場業務に約15年間従事した経験を踏まえ、金融規制法、デリバティブ取引、仕組商品、金融商品関連紛争等に関し、金融実務に即したアドバイスを行うことを得意とする。

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